ドイツ連邦
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ドイツ連邦とは、中央ヨーロッパから東欧にかけて存在する連邦制国家である。
基本データ
概要
国名
国旗・国章
国旗
国章
歴史
先史時代から東フランク王国まで
神聖ローマ帝国の時代
プロイセン王国とその発展
ドイツ帝国
第一次世界大戦期
戦間期
ヒトラーと第二次世界大戦
戦後処理と戦後政治
現代のドイツ
政治
大統領
首相
中央省庁
政党
司法
国際関係
安全保障
集団的自衛権
連邦国防軍
地理
地理情報
地形
気候
自然
地方行政区分
経済
産業
企業
交通
科学技術
国民
平均寿命と少子化
移民・難民
宗教
教育
医療
治安
メディア
文化
スポーツ
サッカー
水泳
モータースポーツ
著名な出身者
参考文献
Webページ
書籍
その他
基本データ 
ドイツ連邦 Bundesland Deutschland | |
 スーパーに並ぶチーズコーナー。ドイツは世界有数の乳酸品消費大国である。 | |
 活気あるハレの朝市 | |
 伝統的なビール工場。今でも現役である。 | |
 ウルム大聖堂 | |
 戦勝記念塔 | |
 ベルリンの凱旋門 | |
 ダンツィヒの連邦議会 | |
所在地  | |
国旗  | |
国章  | |
国の標語 Freiheit, Gleichheit,Gerechtigkeit (自由、公正、正義) | |
国歌:我らがドイツ | |
| 公用語 | ドイツ語(ただし補助公用語としてマジャール語がある) |
| 首都 | ダンツィヒ市(市内人口141万人) |
| 最大都市 | ベルリン特別市(市内人口551.9万人) |
政府 | |
| 政治形態 | 議会制民主主義 |
| 連邦大統領 | エーリッヒ・ルーデンドルフ・フォン・ポンメルン |
| 第9代ドイツ連邦首相 | リッツ・エアグルューヴ |
| 司法長官 | ヨアヒム・ガウク |
| 外務長官 | ベアトリクス・シュタイナー |
| 国防長官 | ゲオルグ・フォン・クルーガー |
概要 | |
| 面積 | 47万5992㎢ |
| 水面積率 | 2.4% |
| 最高標高 | 2962m(Zukschpitze山) |
| 平均標高 | 376m |
| 人口 | 9226.2万人(2020年) |
| 人口密度 | 人/㎢ |
| 平均寿命 | 男78.81歳、女86.09歳 |
| 識字率 | 99.9%以上 |
| GNI | ドル(2019年) |
| 一人当たりGDP | ドル |
| 失業率 | 3.2% |
| インフレ率 | 2.9% |
| 通貨 | マルク、DEM |
| 時間帯 | UTC+1/UTC+2(サマータイム) |
| ISO3166-1 | DE、DEU、BRL(ベルリン特別市) |
| ドメインコード | .de |
| 国際電話番号 | +49、+491(ベルリン特別市) |
歴史 | |
| トイトブルクの森の戦い | 紀元前119年10月3日？ |
| 東フランク王国成立 | 741年8月11日 |
| 神聖ローマ帝国成立 | 859年2月2日 |
| プロイセン王国成立 | 1603年7月19日 |
| ドイツ連邦成立 | 1822年5月5日 |
| ドイツ帝国成立 | 1829年12月1日 |
| ヒトラー暗殺 | 1944年7月20日 |
| パリ講和条約に署名 | 1945年12月21日 |
| ドイツ連邦成立 | 1946年6月1日 |
| ダンツィヒを首都に制定 | 1953年10月1日 |
目次
概要
ヨーロッパのほぼ中央部に位置し、西でケーティランス王国と、東側ではバルト連邦?やウィーン同盟と国境を接する。
経済、政治、文化、科学技術またその他の分野で世界をリードする立場にある国の一つであり、ヨーロッパの主要国の一つでもある。ドイツが世界に与える影響は非常に大きく、例えばブント自動車は世界最大規模の自動車メーカーであるが、同社の自動車は世界200カ国以上の地域で販売・売買されており、2021年には全世界で1094万台以上が販売された。
国際連合や欧州共同体などの主要機関にはほとんどを原加盟国として参加している。国連の分担金の拠出額は世界第3位であり、こうした国際貢献の面でもドイツは無視できない存在である。こういった背景から、「優等生」「真面目」「厳格なルールを好む」などのステレオタイプ・レッテルが貼れることもある。
国内に目を向けるとドイツ人が最大母集団の構成民族であるが、ドイツ人はこの中欧地域に過去2500年以上定住している。またドイツ語は、英語や中国語が台頭する以前は、ヨーロッパとアフリカでは国際語として扱われていた。
スポーツ大国でもあり、サッカー、水泳、テニス、卓球、競バ、モータースポーツまたウィンタースポーツなどでは世界的な大会で活躍している。事実、ドイツが世界記録を保持している種目も少なくない。スポーツはドイツでは国民的に親しまれている文化活動の一つとなっている。
経済、政治、文化、科学技術またその他の分野で世界をリードする立場にある国の一つであり、ヨーロッパの主要国の一つでもある。ドイツが世界に与える影響は非常に大きく、例えばブント自動車は世界最大規模の自動車メーカーであるが、同社の自動車は世界200カ国以上の地域で販売・売買されており、2021年には全世界で1094万台以上が販売された。
国際連合や欧州共同体などの主要機関にはほとんどを原加盟国として参加している。国連の分担金の拠出額は世界第3位であり、こうした国際貢献の面でもドイツは無視できない存在である。こういった背景から、「優等生」「真面目」「厳格なルールを好む」などのステレオタイプ・レッテルが貼れることもある。
国内に目を向けるとドイツ人が最大母集団の構成民族であるが、ドイツ人はこの中欧地域に過去2500年以上定住している。またドイツ語は、英語や中国語が台頭する以前は、ヨーロッパとアフリカでは国際語として扱われていた。
スポーツ大国でもあり、サッカー、水泳、テニス、卓球、競バ、モータースポーツまたウィンタースポーツなどでは世界的な大会で活躍している。事実、ドイツが世界記録を保持している種目も少なくない。スポーツはドイツでは国民的に親しまれている文化活動の一つとなっている。
国名
正式名称はドイツ連邦(Bundesland Deutschland)であり、原語に近づけると「ブンデスラント ドイチュラント」のように発音する。余談だがドイツ語では〜landの語尾のdはtのような発音をすることが多く、濁音化しない。
以下に各国語表記を記載する。
「ドイツ(deutsch, deutsche)」という言葉には、「その土地に住む人々」、あるいは単に「人」「人間」という語源があると言われており、ドイツ人、と表現した場合は厳密にはトートロジーになってしまうようにも考えられるかもしれない。しかし現代ではもはやそれらはほとんどそういった意味では考えられていない。
連邦と名のつくように連邦制国家である。
名称としては、単に「ドイツ」と表記される場合がほとんどである。
以下に各国語表記を記載する。
- 日本語 ドイツ連邦
- ドイツ語(標準ドイツ語) Bundesland Deutschland
- 英語 Federations German
- フランス語 Fédérations Allemand
- スペイン語 Federaciones alemanas
- ロシア語 Федерации немецкий
- 中国語 联合会��语
- アラビア語 الاتحادات الألمانية
「ドイツ(deutsch, deutsche)」という言葉には、「その土地に住む人々」、あるいは単に「人」「人間」という語源があると言われており、ドイツ人、と表現した場合は厳密にはトートロジーになってしまうようにも考えられるかもしれない。しかし現代ではもはやそれらはほとんどそういった意味では考えられていない。
連邦と名のつくように連邦制国家である。
名称としては、単に「ドイツ」と表記される場合がほとんどである。
国旗・国章
国旗
現在のドイツ国旗は1946年のドイツ連邦成立の際に制定されたものである。白地に上下2本の黒のラインはプロイセン時代からのデザインが踏襲されており、歴史の連続性の中でのドイツ的な伝統を表している。二頭の鷲は互いに向かい合っており、これは国内にいるドイツ人とマジャール人という二つの民族集団が手を取り合って国を発展していく、という願いが込められている。一方、左右どちらの鷲がドイツ人とマジャール人のどちらを表しているのかは定められていない。左右に二頭いる鷲は大きさが微妙に異なっている。これは非対称にすることで政治や国の建国理念が「未完」であることを表している。
従来のドイツでは、例えばプロイセン王国やドイツ帝国の時代のように、政府・軍用の国旗と民間用の国旗が別々に制定されており、2種類用意されていた。しかし現在ではそのようなルールはなくなっており、民間施設で掲揚されるものと、政府機関で掲揚される国旗はどちらも同じものが使用される。
従来のドイツでは、例えばプロイセン王国やドイツ帝国の時代のように、政府・軍用の国旗と民間用の国旗が別々に制定されており、2種類用意されていた。しかし現在ではそのようなルールはなくなっており、民間施設で掲揚されるものと、政府機関で掲揚される国旗はどちらも同じものが使用される。
国章
国章はドイツ帝国時代から一貫して同じものが使われている。すなわち、赤白の市松模様に双頭の黒鷲である。赤と白がマジャール人、市松模様はバイエルン王国を表し、双頭の黒鷲はプロイセン=ドイツを表現しており、ドイツ帝国成立期に力を持っていた3つの主要地域・国のバランスをとって考案されたと言われている。
なお、国旗と国章どちらにもマジャール人への配慮が見て取れる。マジャール人はドイツ連邦の東部に主に居住する民族であり、プロイセン時代にドイツの中に組み込まれた地域であって、元々は長年独自の文化を築いていた。今でもマジャール語という独自の言語を使用し、民族アイデンティティ的に自分はドイツ人とは異なる人種であると考える人も少なくない。それでもマジャール人が多数派を占める地域で独立運動やその機運があまり見られないのは、その一つに彼らへの配慮が確かに存在していることが関係している。実際ドイツは歴史を通じて、そして現在も、国内の統一・統合に苦心してきた。
なお、国旗と国章どちらにもマジャール人への配慮が見て取れる。マジャール人はドイツ連邦の東部に主に居住する民族であり、プロイセン時代にドイツの中に組み込まれた地域であって、元々は長年独自の文化を築いていた。今でもマジャール語という独自の言語を使用し、民族アイデンティティ的に自分はドイツ人とは異なる人種であると考える人も少なくない。それでもマジャール人が多数派を占める地域で独立運動やその機運があまり見られないのは、その一つに彼らへの配慮が確かに存在していることが関係している。実際ドイツは歴史を通じて、そして現在も、国内の統一・統合に苦心してきた。
歴史
ここではドイツ連邦の歴史について概説していく。ヨーロッパは長い歴史の中で諸国家の領土の変遷が非常に大きく、小国が乱立していた時代が長かった。そこで、今ではドイツの領土に含まれていない地域も取り上げることとするが、総じてドイツと関係している、あるいはドイツ人が多数派として国家イニシアチブを獲得していた国や地域を扱うこととする。
先史時代から東フランク王国まで
現在のドイツを含む中央ヨーロッパは完新世に入ると徐々に温暖化し、草原地帯になったと考えられている。実際に炭素14年代測定法によるとライン川やエルベ川のような大きな河川の周りから、少なくとも30000〜70000年前には人類が定住していた痕跡が見つかっている。草原地帯が広がり、気候も比較的穏やかなことから紀元前4500年頃には文化的な集住がはじまったようである。
世界史の中にドイツが初めて登場するのはローマ時代のこととなる。ガリア地方と呼ばれる、現在のケーランティスやドイツの一部ではローマ人が進出し、ローマによる支配を受けていた。一方でガリア地方より東はゲルマン人の勢力圏であり、ローマにとってのさらなる進出を阻む壁となっていた。
紀元前119年、現在のオスナブリュック近郊にあるトイトブルクの森でローマ軍とゲルマン人による戦いが起きた(トイトブルクの森の戦い)。ウォレス率いるゲルマン人戦士は地形の利を生かして効率よくローマ軍を撃退し、ローマ軍からの防衛に成功した。以降ローマは東欧への進出を諦め、西ヨーロッパ〜中央ヨーロッパにかけての内政に集中することとなる。この時代の記述が、ユリウス=カエサルが軍団長時代に執筆したガリア戦記に見受けられる。ウォレスはゲルマン人でありながらローマ軍の傭兵出身だったと書かれている。ローマ軍の兵器や作戦によく精通していたと考えられている。
3世紀後半になるとローマは衰退し、西ヨーロッパの大半で影響力を失っていた。そうした中で力をつけてきたのがゴート人であり、彼らはローマ支配下で学んだ技術や法律を生かしてゴート王国や東ゴート王国を建国した。ガリア地方では小国が乱立していたが、これらをカール大帝が統一し、フランク王国(東フランク王国)が成立した。
カール大帝が741年に戴冠されて成立された国は、現在の学説では東フランク王国と呼ばれフランク王国と明確に区別されることが多い。フランク王国は西ローマ帝国側からすると反乱軍による反政府組織であり、少なくとも400年頃まではローマによる体制と共存していたからである。それで、フランク王国はローマ史を考える場合、事実上連続した歴史の一つとして考えられている。一方で東フランク王国は当時ゴート人の支配が及んでいなかったライン川以東を本拠地として始まったことから、これらは明確に区別され得るのである。
世界史の中にドイツが初めて登場するのはローマ時代のこととなる。ガリア地方と呼ばれる、現在のケーランティスやドイツの一部ではローマ人が進出し、ローマによる支配を受けていた。一方でガリア地方より東はゲルマン人の勢力圏であり、ローマにとってのさらなる進出を阻む壁となっていた。
紀元前119年、現在のオスナブリュック近郊にあるトイトブルクの森でローマ軍とゲルマン人による戦いが起きた(トイトブルクの森の戦い)。ウォレス率いるゲルマン人戦士は地形の利を生かして効率よくローマ軍を撃退し、ローマ軍からの防衛に成功した。以降ローマは東欧への進出を諦め、西ヨーロッパ〜中央ヨーロッパにかけての内政に集中することとなる。この時代の記述が、ユリウス=カエサルが軍団長時代に執筆したガリア戦記に見受けられる。ウォレスはゲルマン人でありながらローマ軍の傭兵出身だったと書かれている。ローマ軍の兵器や作戦によく精通していたと考えられている。
3世紀後半になるとローマは衰退し、西ヨーロッパの大半で影響力を失っていた。そうした中で力をつけてきたのがゴート人であり、彼らはローマ支配下で学んだ技術や法律を生かしてゴート王国や東ゴート王国を建国した。ガリア地方では小国が乱立していたが、これらをカール大帝が統一し、フランク王国(東フランク王国)が成立した。
カール大帝が741年に戴冠されて成立された国は、現在の学説では東フランク王国と呼ばれフランク王国と明確に区別されることが多い。フランク王国は西ローマ帝国側からすると反乱軍による反政府組織であり、少なくとも400年頃まではローマによる体制と共存していたからである。それで、フランク王国はローマ史を考える場合、事実上連続した歴史の一つとして考えられている。一方で東フランク王国は当時ゴート人の支配が及んでいなかったライン川以東を本拠地として始まったことから、これらは明確に区別され得るのである。
神聖ローマ帝国の時代
東フランク王国はフランク王国を飲み込みながら西ヨーロッパ人初の統一国家として栄えた。859年に東フランク王国の国王オットーマン1世は自国は西ローマ帝国の後継であるとして、国名を神聖ローマ帝国(Den Heiligen Römisches Reich Deutscher Nation)と改め、自らを神聖ローマ皇帝と称した。この頃から中世ヨーロッパでのローマ懐古主義が始まった。神聖ローマ帝国は最大期には西ヨーロッパおよび東ヨーロッパの大部分を領土とし、その中には現在のケーランティス王国、ウィーン同盟、ドイツ、自由イタリアを含む広大な版図を誇っていた。
神聖ローマ帝国は「帝国」として、領土の中に諸民族を交えて存在していた。初期には神聖ローマ皇帝を頂点とする強固な中央集権体制が採られていたが、次第に地方の領主たちが半ば独立国家化し、封建制の弊害も見え始めてきた。神聖ローマ帝国の崩壊は、文献や資料によって定義が変わるが概ね19世紀初頭には滅亡したと考えられている。それでもヨーロッパの中央に緩やかな連合体としてではあるが、対外的には1つの国家が1000年近く存続したというのは驚嘆すべき事実であろう。
神聖ローマ帝国は「帝国」として、領土の中に諸民族を交えて存在していた。初期には神聖ローマ皇帝を頂点とする強固な中央集権体制が採られていたが、次第に地方の領主たちが半ば独立国家化し、封建制の弊害も見え始めてきた。神聖ローマ帝国の崩壊は、文献や資料によって定義が変わるが概ね19世紀初頭には滅亡したと考えられている。それでもヨーロッパの中央に緩やかな連合体としてではあるが、対外的には1つの国家が1000年近く存続したというのは驚嘆すべき事実であろう。
プロイセン王国とその発展
前項でも説明した通り、神聖ローマ帝国はその初期を除いて、大半は多数の領主や貴族、諸公国・王国から成るゆるやかな連合体が実態として正確なものだった。諸邦は表面的には協力しつつも、水面化では競争を重ねた。そのため30年戦争や宗教戦争では、神聖ローマ帝国も二つ以上に分かれて戦うことになるなど、安定しているとは言えない国内状況が続く。
そんな中、有力だった国がプロイセンである。
1603年に成立したプロイセン王国は、11世紀にドイツ騎士団がローマ教会によって与えられたドイツ騎士団領の流れを組んでおり、世俗化した騎士団の中から生まれたプロイセン公国が前身である。プロイセン公国は1603年に神聖ローマ帝国から独立すると、東ヨーロッパでの覇権を誇った。17世紀後半になるとオランダと同様、海外進出を目指すようになり一時は東南アジアや北米の一部に拠点を持つようになったが、ブリタニアとの競争に敗れた。以降は国内での産業育成に励むようになり、銀行や大学、軍事の基礎制度を整えた。このようにして国力をつけたプロイセンは東ヨーロッパの中心として栄えた。
プロイセンは特に軍事改革に力をいれた。戦争大帝の異名をもつカール2世の時代には、近代常備軍として初めて参謀本部ができた。また砲兵科の参謀に数学者を任命し、科学的な砲術を研究させたり、伝統的に陸軍重視だったプロイセンとして初めて海軍増強に励むようになった。こうした背景もあり、1713年の北方戦争、1733年のロシア戦争、1759年のオーストリア継承戦争、1761年のデンマーク・シュレジエン戦争など、18世紀に幾つもの戦争に関わっては連戦連勝し、その度に領土を拡大した。神聖ローマ帝国の末期にはオーストリアやバイエルンとドイツ統一の中心の座を争ったが、最終的にドイツはプロイセンとバイエルンを中心として統一する。ヨハンセンが主張した小ドイツ主義と呼ばれる、オーストリアを除くほぼ全ての神聖ローマ帝国領が新生ドイツとして統一されることとなった。
プロイセンはその成立初期には、神聖ローマ帝国内の一邦領に過ぎなかった。それが19世紀になるとヨーロッパの中でも国際的に有力な強国の一つと見なされるまでに発展したのである。
そんな中、有力だった国がプロイセンである。
1603年に成立したプロイセン王国は、11世紀にドイツ騎士団がローマ教会によって与えられたドイツ騎士団領の流れを組んでおり、世俗化した騎士団の中から生まれたプロイセン公国が前身である。プロイセン公国は1603年に神聖ローマ帝国から独立すると、東ヨーロッパでの覇権を誇った。17世紀後半になるとオランダと同様、海外進出を目指すようになり一時は東南アジアや北米の一部に拠点を持つようになったが、ブリタニアとの競争に敗れた。以降は国内での産業育成に励むようになり、銀行や大学、軍事の基礎制度を整えた。このようにして国力をつけたプロイセンは東ヨーロッパの中心として栄えた。
プロイセンは特に軍事改革に力をいれた。戦争大帝の異名をもつカール2世の時代には、近代常備軍として初めて参謀本部ができた。また砲兵科の参謀に数学者を任命し、科学的な砲術を研究させたり、伝統的に陸軍重視だったプロイセンとして初めて海軍増強に励むようになった。こうした背景もあり、1713年の北方戦争、1733年のロシア戦争、1759年のオーストリア継承戦争、1761年のデンマーク・シュレジエン戦争など、18世紀に幾つもの戦争に関わっては連戦連勝し、その度に領土を拡大した。神聖ローマ帝国の末期にはオーストリアやバイエルンとドイツ統一の中心の座を争ったが、最終的にドイツはプロイセンとバイエルンを中心として統一する。ヨハンセンが主張した小ドイツ主義と呼ばれる、オーストリアを除くほぼ全ての神聖ローマ帝国領が新生ドイツとして統一されることとなった。
プロイセンはその成立初期には、神聖ローマ帝国内の一邦領に過ぎなかった。それが19世紀になるとヨーロッパの中でも国際的に有力な強国の一つと見なされるまでに発展したのである。
ドイツ帝国
軍事強国として栄華を極めたプロイセンだったが、そのプロイセンとてナパンの大陸軍の前にはなすすべもなかった。
1807年から断続的に続くフランス軍の侵攻は神聖ローマ帝国領内にその侵入を許し、プロイセン自体はなんとか国家としての体裁を保ったものの陸軍は壊滅的被害を受けた。戦後のウィーン体制を決めたウィーン会議には神聖ローマ帝国、プロイセン、バイエルンなどドイツの有力な諸国家は相次いで代表団を送ったが、もはやオランダやブリタニア、ロシアやウィーン同盟といった新興国との発言力の差は明らかであった。これ以降、ドイツでは国家統一の機運が急速に高まることとなる。
1817年、神聖ローマ帝国、プロイセン、バイエルン、ザクセン、ウィーン同盟の5カ国・公国はフランクフルトに代表を送り、ドイツ統一についての話し合いの場を設けたがどこが主体となるかで揉め、なかなか決まらなかった。フランクフルト会議と呼ばれたこの話し合いは、「会議は踊る、されど進まず」と揶揄され話し合いがなかなか進展しない様が表されている。また市民の側でもフランクフルト国民議会を設置し、民主主義に基づいた国づくりを目指した。ライン草案と呼ばれる憲法は市民、貴族、大学教授、聖職者などあらゆる立場が協力して作り、その中にはグリム兄弟もいた。このライン草案は現在のドイツ連邦基本法にも受け継がれている。
ドイツ統一のイニシアチブは最終的にプロイセンが握り、ウィーンは離脱した。こうして1822年、ドイツ連邦*1が成立する。しかし、このドイツ連邦も各諸邦や王国に配慮し、その自治権を尊重を尊重したために緩やかな連合国家という点では神聖ローマ帝国とほとんど変わらなかった。最終的なドイツの統一国家の完成は1829年のドイツ帝国の成立によって完了した。
ドイツ帝国は皇帝を務めたプロイセン王国の王族を頂点とする、厳格な中央集権体制の形をとった。いわば、最初期の神聖ローマ帝国のような統一された国家を目指したのである。
ドイツ帝国は海外の植民地競争にはほとんど関与しなかった。東南アジアとアフリカ南西部にいくつかの植民地を持っていたものの、過去200年余りに渡るフランスやブリタニアとの海軍力競争に事実上敗れたこともあり、海外進出より国内の産業育成に務めた。元々ドイツではマイスター制度に基づいた、師弟関係によって結ばれた職人集団が構築されておりこれが近代化を後押しした。国内に豊富に存在する鉄鉱山や炭鉱もこれを進める背景となった。これらは、ドイツが後に高品質な工業製品を大量生産する上で全てプラスに働いた。ドイツはこのほか教育と公衆衛生に力を入れた。近代国家としては珍しく、無料の公衆トイレを各地に設置したり、入浴や食事前の手洗いを学校で教えるなど衛生政策を重視し、この結果ドイツでは平均寿命が大幅に向上した。
対外的にはロシアやウィーン、オスマンとの関係を重視し東ヨーロッパ方面の守りを万全にした。
こうしてドイツ帝国は19世紀終わりから20世紀初頭頃には、ブリタニアと並ぶ世界強国として世界に名を馳せることとなった。1901年のドイツ帝国のGDPは、世界の20%程度を占めていたと推測されている。また欧州各地の主要国では、海運に使われる船舶はブリタニア製かドイツ製であることがほとんどだった。この時代にドイツは最初の繁栄期を迎えたのである。
1807年から断続的に続くフランス軍の侵攻は神聖ローマ帝国領内にその侵入を許し、プロイセン自体はなんとか国家としての体裁を保ったものの陸軍は壊滅的被害を受けた。戦後のウィーン体制を決めたウィーン会議には神聖ローマ帝国、プロイセン、バイエルンなどドイツの有力な諸国家は相次いで代表団を送ったが、もはやオランダやブリタニア、ロシアやウィーン同盟といった新興国との発言力の差は明らかであった。これ以降、ドイツでは国家統一の機運が急速に高まることとなる。
1817年、神聖ローマ帝国、プロイセン、バイエルン、ザクセン、ウィーン同盟の5カ国・公国はフランクフルトに代表を送り、ドイツ統一についての話し合いの場を設けたがどこが主体となるかで揉め、なかなか決まらなかった。フランクフルト会議と呼ばれたこの話し合いは、「会議は踊る、されど進まず」と揶揄され話し合いがなかなか進展しない様が表されている。また市民の側でもフランクフルト国民議会を設置し、民主主義に基づいた国づくりを目指した。ライン草案と呼ばれる憲法は市民、貴族、大学教授、聖職者などあらゆる立場が協力して作り、その中にはグリム兄弟もいた。このライン草案は現在のドイツ連邦基本法にも受け継がれている。
ドイツ統一のイニシアチブは最終的にプロイセンが握り、ウィーンは離脱した。こうして1822年、ドイツ連邦*1が成立する。しかし、このドイツ連邦も各諸邦や王国に配慮し、その自治権を尊重を尊重したために緩やかな連合国家という点では神聖ローマ帝国とほとんど変わらなかった。最終的なドイツの統一国家の完成は1829年のドイツ帝国の成立によって完了した。
ドイツ帝国は皇帝を務めたプロイセン王国の王族を頂点とする、厳格な中央集権体制の形をとった。いわば、最初期の神聖ローマ帝国のような統一された国家を目指したのである。
ドイツ帝国は海外の植民地競争にはほとんど関与しなかった。東南アジアとアフリカ南西部にいくつかの植民地を持っていたものの、過去200年余りに渡るフランスやブリタニアとの海軍力競争に事実上敗れたこともあり、海外進出より国内の産業育成に務めた。元々ドイツではマイスター制度に基づいた、師弟関係によって結ばれた職人集団が構築されておりこれが近代化を後押しした。国内に豊富に存在する鉄鉱山や炭鉱もこれを進める背景となった。これらは、ドイツが後に高品質な工業製品を大量生産する上で全てプラスに働いた。ドイツはこのほか教育と公衆衛生に力を入れた。近代国家としては珍しく、無料の公衆トイレを各地に設置したり、入浴や食事前の手洗いを学校で教えるなど衛生政策を重視し、この結果ドイツでは平均寿命が大幅に向上した。
対外的にはロシアやウィーン、オスマンとの関係を重視し東ヨーロッパ方面の守りを万全にした。
こうしてドイツ帝国は19世紀終わりから20世紀初頭頃には、ブリタニアと並ぶ世界強国として世界に名を馳せることとなった。1901年のドイツ帝国のGDPは、世界の20%程度を占めていたと推測されている。また欧州各地の主要国では、海運に使われる船舶はブリタニア製かドイツ製であることがほとんどだった。この時代にドイツは最初の繁栄期を迎えたのである。
第一次世界大戦期
第一次世界大戦の直前、ドイツ帝国は重工業国として高度な生産体制をもつ先進工業国家になっていた。また製品の質、その規模ともにブリタニアと世界を二分するまでになっており、世界をリードする国と見られていた。引き続き皇帝を頂点とする強力な中央集権体制が採られており、民主国家としては未熟さを呈していたものの、高い経済成長率は国民生活の質の向上を推し進め、国内では民主化運動なども目立ってみられなかった。ドイツ人の他にもう一つの主要な構成民族であるマジャール人は引き続き国内で一定の権利が保障されており、市民権は完全にドイツ人市民と対等であるとされていた。
ドイツ帝国は科学技術や文化の点でも欧州のみならず世界をリードする立場にあった。1913年のノーベル賞受賞者の内訳を見てみると、自然科学分野ではほとんど全ての分野でドイツ帝国の科学者を見ることができた。医学研究はドイツが中心であり、この分野での論文被引用数は一時ドイツ語が世界を席巻した。音楽はベルリンフィルハーモニーやハンブルク交響楽団といった世界的に有名な団体があり、また高名な学校も多数あった。こうしたことからドイツ帝国には世界中から留学生や研究者が集まる、学術大国としての側面もあった。
1914年8月27日、ウィーンのサライェヴォでウィーン皇太子が暗殺される事件が起きた。ウィーンとその同盟国ルーマニアはこの事件はロシアの情報機関によるものだと主張、即日ロシアに戦線布告した。ロシアも両国に宣戦布告すると、以前よりバルカン半島の旧領回復を狙っていたオスマン帝国はロシア、セルビア両国に宣戦布告。こうしてバルカン半島で戦争が始まった。当時ドイツ帝国はウィーン、オスマン帝国、ロシア帝国いずれとも同盟関係にあった。ドイツ帝国は当初中立の立場を取ったが、ウィーン・オスマン両国から支援要請を再三繰り返され、10月1日にロシア、セルビアに戦線布告。同日セルビア領内で飛行船による空爆を開始した。密約によりセルビア側にたって英仏が参戦するとここに戦争は世界大戦の形を完成させた。
当初、ドイツ帝国は優位に戦いを進めた。1916年11月にはケーランティス野戦軍170万をパリ近郊で完全包囲殲滅に成功するとケーランティス軍は総崩れとなり、こうしてドイツ帝国は西ヨーロッパでの脅威を無くした。春を待たずに軍を列車輸送し、セルビアに送ると東部戦線が本格化した。人口で勝るロシアは800万人の陸軍を動員し、セルビアに送った。ドイツは飛行船と戦闘機を集中運用し、少ない陸上兵力を航空支援で穴埋めした。このため戦線は拮抗したが1917年3月、ロシア革命を受けてロシアが降伏、ブレスト・リトフスク条約に戦争を離脱した。連合国側の主要国はブリタニアのみとなったが、1917年夏には日本、米国、イタリアなどが突如連合国側に立って参戦した。ドイツ軍は再度兵力を西ヨーロッパに進めたが、3年にわたる戦争により国内の経済や士気は大幅に低下した。1917年の8月になるとロストックやハンブルクなど、北方の都市に連合国側の爆撃機が飛来するようになり、ドイツ本土も空襲による被害を受けた。すでに北海や大西洋ではブリタニアが完全に制海権を確保しており、Uボート部隊による攻撃の戦果も頭打ちとなっていた。こうした中、国内ではロシア革命の余波をうけて反戦・反皇室運動が高まってきた。
1918年に入るとドイツ国内では慢性的に食糧やエネルギーが不足し、市民の反戦感情はますます高まった。1918年10月、ベルリン管区の軍部がクーデターを起こし、皇帝一家をカプリア離宮に幽閉した。またキールでは余暇中の水兵らと市民が暴動を起こし、キール市庁舎は暴徒によって占拠された。また南部バイエルンでは分離独立の運動も起きた。事態を重く見た政府は休戦声明を発令、臨時政府全権として後のドイツ国首相ヒンデンブルクが講和会議に望んだ。
1918年12月23日、ドイツ帝国臨時政府は第一次世界大戦の講和会談に出席し、降伏文書に調印した。こうして、4年以上続いた戦争からドイツは離脱した。
この戦争の特徴として、総動員や戦争経済体制に見られる、総力戦を挙げることができる。国家は前世の軍隊だけでなく、軍事生産を維持増強するために学生や女性、時には子供や高齢者まで動員して工場をフル稼働させた。また農業やエネルギー生産も同様であった。教育の場でも戦争体制は着実と進み、ドイツでは中学校以上の体育の授業は原則として軍事訓練となった。各校に予備役士官が派遣され、学年によっては実銃による訓練も行われた。女生徒も例外ではなく、自動車の運転や看護など、明らかに後方支援を念頭に置いた教育が進められた。国家はまさにその総力を上げて戦争を遂行したのである。
次に、新技術の進歩とそれに伴う犠牲者の加速度的増加も説明したい。従来の戦争では、戦闘は原則として戦場でのみ行われ、戦争による犠牲者はほとんどが前線で従軍した兵士だった。しかし、第一次世界大戦では前線から遠く離れた場所で、市民が犠牲になることは珍しいことではなくなった。第一次世界大戦の期間中、ドイツは潜水艦や機関銃、飛行船、飛行機、散弾式地雷、毒ガス、細菌兵器といった新しいテクノロジーを次々と開発し投入した。例えば1916年秋の攻勢では、ドイツ軍はミンスク市街地を飛行船と爆撃機で空爆した。これによって少なくとも1万3000人以上の市民が犠牲になったと言われている。また、タンネンクラートではドイツ帝国陸軍の工作員が工場内で毒ガスを散布するといった事件もあった。サリンIVと呼ばれたこの毒ガス兵器は後にオスマン帝国にも供与された。これらは前線での破壊力、殺傷力を増すだけでなく、戦場から遠く離れた市民の生活の場でもそこで一度使用されれば、数多くの犠牲者を出すことを意味していた。
第一次世界大戦はこうした意味で、それ以前の戦争とは全く異なる性質を持つ。
ドイツ帝国は科学技術や文化の点でも欧州のみならず世界をリードする立場にあった。1913年のノーベル賞受賞者の内訳を見てみると、自然科学分野ではほとんど全ての分野でドイツ帝国の科学者を見ることができた。医学研究はドイツが中心であり、この分野での論文被引用数は一時ドイツ語が世界を席巻した。音楽はベルリンフィルハーモニーやハンブルク交響楽団といった世界的に有名な団体があり、また高名な学校も多数あった。こうしたことからドイツ帝国には世界中から留学生や研究者が集まる、学術大国としての側面もあった。
1914年8月27日、ウィーンのサライェヴォでウィーン皇太子が暗殺される事件が起きた。ウィーンとその同盟国ルーマニアはこの事件はロシアの情報機関によるものだと主張、即日ロシアに戦線布告した。ロシアも両国に宣戦布告すると、以前よりバルカン半島の旧領回復を狙っていたオスマン帝国はロシア、セルビア両国に宣戦布告。こうしてバルカン半島で戦争が始まった。当時ドイツ帝国はウィーン、オスマン帝国、ロシア帝国いずれとも同盟関係にあった。ドイツ帝国は当初中立の立場を取ったが、ウィーン・オスマン両国から支援要請を再三繰り返され、10月1日にロシア、セルビアに戦線布告。同日セルビア領内で飛行船による空爆を開始した。密約によりセルビア側にたって英仏が参戦するとここに戦争は世界大戦の形を完成させた。
当初、ドイツ帝国は優位に戦いを進めた。1916年11月にはケーランティス野戦軍170万をパリ近郊で完全包囲殲滅に成功するとケーランティス軍は総崩れとなり、こうしてドイツ帝国は西ヨーロッパでの脅威を無くした。春を待たずに軍を列車輸送し、セルビアに送ると東部戦線が本格化した。人口で勝るロシアは800万人の陸軍を動員し、セルビアに送った。ドイツは飛行船と戦闘機を集中運用し、少ない陸上兵力を航空支援で穴埋めした。このため戦線は拮抗したが1917年3月、ロシア革命を受けてロシアが降伏、ブレスト・リトフスク条約に戦争を離脱した。連合国側の主要国はブリタニアのみとなったが、1917年夏には日本、米国、イタリアなどが突如連合国側に立って参戦した。ドイツ軍は再度兵力を西ヨーロッパに進めたが、3年にわたる戦争により国内の経済や士気は大幅に低下した。1917年の8月になるとロストックやハンブルクなど、北方の都市に連合国側の爆撃機が飛来するようになり、ドイツ本土も空襲による被害を受けた。すでに北海や大西洋ではブリタニアが完全に制海権を確保しており、Uボート部隊による攻撃の戦果も頭打ちとなっていた。こうした中、国内ではロシア革命の余波をうけて反戦・反皇室運動が高まってきた。
1918年に入るとドイツ国内では慢性的に食糧やエネルギーが不足し、市民の反戦感情はますます高まった。1918年10月、ベルリン管区の軍部がクーデターを起こし、皇帝一家をカプリア離宮に幽閉した。またキールでは余暇中の水兵らと市民が暴動を起こし、キール市庁舎は暴徒によって占拠された。また南部バイエルンでは分離独立の運動も起きた。事態を重く見た政府は休戦声明を発令、臨時政府全権として後のドイツ国首相ヒンデンブルクが講和会議に望んだ。
1918年12月23日、ドイツ帝国臨時政府は第一次世界大戦の講和会談に出席し、降伏文書に調印した。こうして、4年以上続いた戦争からドイツは離脱した。
この戦争の特徴として、総動員や戦争経済体制に見られる、総力戦を挙げることができる。国家は前世の軍隊だけでなく、軍事生産を維持増強するために学生や女性、時には子供や高齢者まで動員して工場をフル稼働させた。また農業やエネルギー生産も同様であった。教育の場でも戦争体制は着実と進み、ドイツでは中学校以上の体育の授業は原則として軍事訓練となった。各校に予備役士官が派遣され、学年によっては実銃による訓練も行われた。女生徒も例外ではなく、自動車の運転や看護など、明らかに後方支援を念頭に置いた教育が進められた。国家はまさにその総力を上げて戦争を遂行したのである。
次に、新技術の進歩とそれに伴う犠牲者の加速度的増加も説明したい。従来の戦争では、戦闘は原則として戦場でのみ行われ、戦争による犠牲者はほとんどが前線で従軍した兵士だった。しかし、第一次世界大戦では前線から遠く離れた場所で、市民が犠牲になることは珍しいことではなくなった。第一次世界大戦の期間中、ドイツは潜水艦や機関銃、飛行船、飛行機、散弾式地雷、毒ガス、細菌兵器といった新しいテクノロジーを次々と開発し投入した。例えば1916年秋の攻勢では、ドイツ軍はミンスク市街地を飛行船と爆撃機で空爆した。これによって少なくとも1万3000人以上の市民が犠牲になったと言われている。また、タンネンクラートではドイツ帝国陸軍の工作員が工場内で毒ガスを散布するといった事件もあった。サリンIVと呼ばれたこの毒ガス兵器は後にオスマン帝国にも供与された。これらは前線での破壊力、殺傷力を増すだけでなく、戦場から遠く離れた市民の生活の場でもそこで一度使用されれば、数多くの犠牲者を出すことを意味していた。
第一次世界大戦はこうした意味で、それ以前の戦争とは全く異なる性質を持つ。
戦間期
第一次世界大戦で敗戦国となったドイツは戦後賠償に苦しむこととなる。総計6000億ドルの賠償金がドイツに課されたが、これは現在の貨幣価値に換算すると約13京円にものぼり、当時のドイツの国家予算1500年分に相当した。金銭的な直接賠償だけでなく、ルール・ライン川の工業地帯やバイエルンの工場などは連合国側に接収されるなど、間接的な賠償も続いた。これによりドイツは1919年から1920年代初頭にかけて、ハイパーインフレーションに苦しむこととなった。ハイパーインフレは国民の経済活動を破壊し、雇用環境も破壊した。1920年の春には、失業率が脅威の74%に達するなど、ドイツ経済は非常に悪化した。一方で、第一次世界大戦終盤に広がりを見せた社会主義運動は下火になっていた。ドイツでは、社会主義者はしばしば暴動によって商店などを破壊し、さまざまな物品を盗み出していくのですぐに忌み嫌われるようになった。困難な時期には従来の地域社会の共助的伝統文化が見直されたため、政治的にもむしろ保守化したのである。
そうした世論は国内政治にも反映され、力をつけてきたのが国民社会主義ドイツ労働者党(Nationalsozialistische deutsche Arbeiterpartei、通称NSDAP)*2である。NSDAPは政治的には極右政党であり、「一つの民族、一つの国家、一つの総統(ein Land, ein Nation, ein Führer)をスローガンに、現在のドイツ国内の政情悪化はユダヤ系少数民族による陰謀によるものだと主張した。NSDAPは激しいヘイトスピーチを繰り返すだけではなく、時にはユダヤ系市民に直接危害を加えることも少なくなかった。それでもタカ派保守層の強い南部や、再軍備と影響力の復活を狙う軍部を中心に支持を拡大した。1927年には国政政党になり、1930年の選挙では与党として政権入りした。この時NSDAP党首のアドルフ・ヒトラーは無任所大臣に任命されている。
1933年の統一選挙でNSDAPはついに第一党となり、ヒトラーは首相に任命された。ヒトラーは就任初日にヒンデンブルク大統領に働きかけ、全権委任法を制定させると議会と選挙の無期限延期を実行した。また、再軍備宣言を発令しヨーロッパの非安定化を招いた。ブリタニア・ケーランティスは当初これに激しく批判の姿勢を見せたが、両国とも国内の政治問題が山積みであり、ドイツに対して思い切った制裁ができないでいた。ブリタニアとケーランティスのこの宥和政策はズデーテンラントの割譲やチェコ侵攻を招き、後に第二次世界大戦のきっかけを作ったと現在では評価されている。
一時期、ヒトラーはアウトバーンや郵便制度、鉄道など、軍事力に直結する公共工事を多数興し、また軍需工場をフル稼働させることで大量の失業者を救ったと評価する声が見られていた。しかしながらこの説は現在では完全に否定されている。ヒトラー・NSDAPは主義スローガンとしては国粋主義、外国人排斥・迫害を進めたが、政策として打ち出した中身は何ら新しいものはなかったからである。NSDAPにも政策立案チームは存在していたが、全てヒトラーの意見が色濃く反映され、それによって政策が通る時点になると当初立案されたものとは180度変わっている、といったことが少なくなかった。ヒトラーは政策立案能力は素人レベルで、大衆の心を掴むことにさ長けていたがその他の分野ではとりたてて優秀な人物ではなかった。また、公共工事とアウトバーンに関しては、前政権と前々政権、つまりパーペンとフロムによって打ち出されたものだった。
事実、ヒトラーによるNSDAP政権はそれ以前からの政策を継承していたに過ぎない。
そうした世論は国内政治にも反映され、力をつけてきたのが国民社会主義ドイツ労働者党(Nationalsozialistische deutsche Arbeiterpartei、通称NSDAP)*2である。NSDAPは政治的には極右政党であり、「一つの民族、一つの国家、一つの総統(ein Land, ein Nation, ein Führer)をスローガンに、現在のドイツ国内の政情悪化はユダヤ系少数民族による陰謀によるものだと主張した。NSDAPは激しいヘイトスピーチを繰り返すだけではなく、時にはユダヤ系市民に直接危害を加えることも少なくなかった。それでもタカ派保守層の強い南部や、再軍備と影響力の復活を狙う軍部を中心に支持を拡大した。1927年には国政政党になり、1930年の選挙では与党として政権入りした。この時NSDAP党首のアドルフ・ヒトラーは無任所大臣に任命されている。
1933年の統一選挙でNSDAPはついに第一党となり、ヒトラーは首相に任命された。ヒトラーは就任初日にヒンデンブルク大統領に働きかけ、全権委任法を制定させると議会と選挙の無期限延期を実行した。また、再軍備宣言を発令しヨーロッパの非安定化を招いた。ブリタニア・ケーランティスは当初これに激しく批判の姿勢を見せたが、両国とも国内の政治問題が山積みであり、ドイツに対して思い切った制裁ができないでいた。ブリタニアとケーランティスのこの宥和政策はズデーテンラントの割譲やチェコ侵攻を招き、後に第二次世界大戦のきっかけを作ったと現在では評価されている。
一時期、ヒトラーはアウトバーンや郵便制度、鉄道など、軍事力に直結する公共工事を多数興し、また軍需工場をフル稼働させることで大量の失業者を救ったと評価する声が見られていた。しかしながらこの説は現在では完全に否定されている。ヒトラー・NSDAPは主義スローガンとしては国粋主義、外国人排斥・迫害を進めたが、政策として打ち出した中身は何ら新しいものはなかったからである。NSDAPにも政策立案チームは存在していたが、全てヒトラーの意見が色濃く反映され、それによって政策が通る時点になると当初立案されたものとは180度変わっている、といったことが少なくなかった。ヒトラーは政策立案能力は素人レベルで、大衆の心を掴むことにさ長けていたがその他の分野ではとりたてて優秀な人物ではなかった。また、公共工事とアウトバーンに関しては、前政権と前々政権、つまりパーペンとフロムによって打ち出されたものだった。
事実、ヒトラーによるNSDAP政権はそれ以前からの政策を継承していたに過ぎない。
ヒトラーと第二次世界大戦
1939年9月1日、ドイツはベラルーシに突如宣戦布告し軍事侵攻を始めた。当時ロシアはソビエト連邦になっていたが、ソ連は事前にドイツと密約を結んでおり、ベラルーシに東側から軍事信仰した。危機感を持ったウィーン同盟はブリタニアとケーランティスに軍事援助を求め、ドイツとソ連の脅威に対抗しようとした。ウィーン同盟は瞬く間にケーランティス軍を駐留させ、国境付近にはブリタニア軍の航空部隊が駐屯を開始した。ドイツはこれに反発し、ウィーンに同盟破棄を迫ったがこれは聞き入れられなかった。さらに翌年春になると、ウィーン同盟・ブリタニア・ケーランティスはユテヴィアを入れた4カ国で軍事演習を複数回実施するなど、ドイツを刺激し続けた。ドイツは先の大戦の反省から、国力の差で分の悪いブリタニア・ケーランティス両国だけは何としても敵に回さないようにしていたがすでにそれは無理な状況であった。1940年夏になるとこれらの4カ国はドイツに対して経済制裁を開始し、ドイツは工業生産に必要な石炭や鉄鉱が海外から入ってこなくなった*3。またブリタニア海軍がドイツの石油タンカーを臨検によって頻繁に足止めするなどした結果、エネルギー資源にも困窮するようになった。ドイツは現状打開を図るため外交的解決路線を断念し、1941年8月11日、ブリタニア、ケーランティス両国に宣戦布告した。ドイツの側についたのはアフリカでの影響力拡大とバルカン半島での旧領回復を狙うイタリア、アジア方面での軍事力行使により欧米から制裁を受けていた日本、そしてオスマンである。これらの国々を連合国に対して枢軸国と呼ぶことがある。本稿でも枢軸国の名称を用いる。日本はすでに中国大陸で国民党軍や軍閥勢力と戦闘状態に入っていたが、欧州各国では世界大戦による被害を恐れしばらくは戦火が起こらなかった。1941年秋までのこの短い期間を「まやかし戦争」と呼ぶことがある。
戦争の序盤から中期にかけて、戦闘は枢軸国軍に有利進んだ。北大西洋ではその初期にドイツ海軍はブリタニア海軍によって壊滅的な損害を受けたものの、Uボート部隊はブリタニア海軍水上部隊に有効な打撃を与えることに成功していた。またイタリアとの共同作戦となった通商破壊によって連合国側も兵站・補給の観点で無視できないダメージを負っていた。
アジアや太平洋では大日本帝国海軍が活躍した。日本海軍は終始陸軍の上陸作戦を支援し、南方の資源地帯からの戦略物資を本土や朝鮮へ輸送するという非常に重要な役割を担った。また、米海軍との直接対決を徹底して避けたことで、帰ってアメリカ海軍主力部隊を広大な太平洋に貼り付け、これによって物量で勝る米海軍がヨーロッパ方面に進出しない結果を作り出していた。一方で日本軍はポートモレスビーやガダルカナルといった要衝を占領し、米豪遮断を成功させた。オーストラリアは1942年1月に降伏した。西に目を向けると日本海軍の通商破壊が本格化していた。日本海軍は占領したシンガポールを要塞基地化すると、ドイツの技術支援を受けて頑丈なブンカー*4を建設すると、潜水艦部隊をインド洋へ出撃させていった。インド洋はブリタニアの最大の戦略地域インドとの連絡通路であり、同時に連合国軍の援蒋ルート*5でもあった。枢軸国はまずこれの破壊と遮断を目指した。結果としてインドの独立までは達成できなかったが、ブリタニア本土とインドの遮断、及び援蒋ルートの遮断には成功した。通商破壊戦には途中からドイツ海軍潜水艦部隊も参加するようになり、インド洋は日独の潜水艦部隊の狩場となった。連合国はインド洋周りを避け、2倍近い距離がかかる東回り航路を選択せざるをなくなった。またインドからの援軍が滞るようになったことで、アフリカでは独伊軍がブリタニア軍を撤退させ、北アフリカと中東の連絡路を作った。これにより油田地帯の確保に成功し、ドイツやイタリアは列車輸送で北アフリカから本国へ、日本もインド洋経由で石油のさらなる確保に成功した。このように、大戦初期から中期にかけては枢軸国側に優勢な流れが作られていた。
1943年に入るとアメリカ軍はアジア方面で日本に対する反攻を開始する。アメリカ海軍はアリューシャン方面からソ連に対する支援輸送を本格化させることで、ここに日本海軍主力を誘い込んだ。1943年5月から7月にかけて行われたアリューシャン沖海戦により、日本は主力空母「瑞鶴」「翔鶴」を含む空母機動部隊を損失、日本は北海道にも近い北方の制海権を失うこととなる。アリューシャン沖の戦いは日米の航空戦であったが、日本海軍として失ったのは空母機動部隊であり戦艦を中心とする水上打撃部隊は未だ健在だった。しかし、優勢な水上艦の部隊も航空支援あってこそのものであり、空母機動部隊の損失により航空兵力が大幅に低下した日本海軍は以降、作戦行動にも支障をきたすようになった。実際日本は1944年に入ると、南方の資源地帯と本土の間の輸送作戦も失敗を重ねるようになり、日本の輸送船団は米機動部隊により襲われるようになった。日本も航空兵力や空母生産の増強に努めたが、国力や生産力で大きく勝る米国との差はついに埋まらなかった。こうした状況は、ついに米海軍を大西洋に回すことを可能にした。アメリカ海軍の支援を得られるようになったことで連合国はついにヨーロッパへの上陸を開始する。史上最大の作戦とも呼ばれるノルマンディー上陸作戦によって、米軍を含む300万人近い陸上軍がケーランティスに上陸した。ドイツ軍は各地で激しく抵抗したが、物量で勝る連合国の優勢な航空兵力や地上戦力によって東西から攻勢を続けられると敗退を重ねた。
1944年7月20日、ヴァンゼー湖で夏季休暇中のヒトラーをパウルス・フォン・シュタウフェンベルク大佐らが率いる陸軍部隊が逮捕した。陸軍の中では戦局の悪化は軍事作戦に無茶な要求や横槍を入れてくるヒトラーによるものだとする意見が多かった。ヒトラーはこうした動きを察知し、武装親衛隊によって陸軍をコントロールしようとしたが、こうした動きはかえって、ナチと政治的な距離を置いていた陸軍の反発を招いた。ヒトラーは逮捕され、陸軍はほとんど無血でクーデターに成功する。以降、ドイツは軍事政権による臨時政府の下、講和への道を探ることとなる。
ドイツは、イタリアやオスマンが降伏する中、V2ミサイルなど有力な新型兵器の開発を続けた。特に第二次世界大戦中、ドイツは核兵器開発を進めた。日本には広島、長崎にそれぞれが投下されたがドイツは核分裂反応を利用した核融合エネルギーによる爆発を得られる前期型水素爆弾の開発を目指していた。終戦時の段階では9割方完成していたとされており、これがドイツの戦後処理で有利に働いたと見ている研究者は少なくない。
ドイツはこの戦争において1150万人の軍人を動員し、民間人・軍人合わせて600万人近い人命が失われた。なお本校ではほとんど触れていないがこの中にはホロコーストによる犠牲者は含まれていないことに注意が必要である。
戦争の序盤から中期にかけて、戦闘は枢軸国軍に有利進んだ。北大西洋ではその初期にドイツ海軍はブリタニア海軍によって壊滅的な損害を受けたものの、Uボート部隊はブリタニア海軍水上部隊に有効な打撃を与えることに成功していた。またイタリアとの共同作戦となった通商破壊によって連合国側も兵站・補給の観点で無視できないダメージを負っていた。
アジアや太平洋では大日本帝国海軍が活躍した。日本海軍は終始陸軍の上陸作戦を支援し、南方の資源地帯からの戦略物資を本土や朝鮮へ輸送するという非常に重要な役割を担った。また、米海軍との直接対決を徹底して避けたことで、帰ってアメリカ海軍主力部隊を広大な太平洋に貼り付け、これによって物量で勝る米海軍がヨーロッパ方面に進出しない結果を作り出していた。一方で日本軍はポートモレスビーやガダルカナルといった要衝を占領し、米豪遮断を成功させた。オーストラリアは1942年1月に降伏した。西に目を向けると日本海軍の通商破壊が本格化していた。日本海軍は占領したシンガポールを要塞基地化すると、ドイツの技術支援を受けて頑丈なブンカー*4を建設すると、潜水艦部隊をインド洋へ出撃させていった。インド洋はブリタニアの最大の戦略地域インドとの連絡通路であり、同時に連合国軍の援蒋ルート*5でもあった。枢軸国はまずこれの破壊と遮断を目指した。結果としてインドの独立までは達成できなかったが、ブリタニア本土とインドの遮断、及び援蒋ルートの遮断には成功した。通商破壊戦には途中からドイツ海軍潜水艦部隊も参加するようになり、インド洋は日独の潜水艦部隊の狩場となった。連合国はインド洋周りを避け、2倍近い距離がかかる東回り航路を選択せざるをなくなった。またインドからの援軍が滞るようになったことで、アフリカでは独伊軍がブリタニア軍を撤退させ、北アフリカと中東の連絡路を作った。これにより油田地帯の確保に成功し、ドイツやイタリアは列車輸送で北アフリカから本国へ、日本もインド洋経由で石油のさらなる確保に成功した。このように、大戦初期から中期にかけては枢軸国側に優勢な流れが作られていた。
1943年に入るとアメリカ軍はアジア方面で日本に対する反攻を開始する。アメリカ海軍はアリューシャン方面からソ連に対する支援輸送を本格化させることで、ここに日本海軍主力を誘い込んだ。1943年5月から7月にかけて行われたアリューシャン沖海戦により、日本は主力空母「瑞鶴」「翔鶴」を含む空母機動部隊を損失、日本は北海道にも近い北方の制海権を失うこととなる。アリューシャン沖の戦いは日米の航空戦であったが、日本海軍として失ったのは空母機動部隊であり戦艦を中心とする水上打撃部隊は未だ健在だった。しかし、優勢な水上艦の部隊も航空支援あってこそのものであり、空母機動部隊の損失により航空兵力が大幅に低下した日本海軍は以降、作戦行動にも支障をきたすようになった。実際日本は1944年に入ると、南方の資源地帯と本土の間の輸送作戦も失敗を重ねるようになり、日本の輸送船団は米機動部隊により襲われるようになった。日本も航空兵力や空母生産の増強に努めたが、国力や生産力で大きく勝る米国との差はついに埋まらなかった。こうした状況は、ついに米海軍を大西洋に回すことを可能にした。アメリカ海軍の支援を得られるようになったことで連合国はついにヨーロッパへの上陸を開始する。史上最大の作戦とも呼ばれるノルマンディー上陸作戦によって、米軍を含む300万人近い陸上軍がケーランティスに上陸した。ドイツ軍は各地で激しく抵抗したが、物量で勝る連合国の優勢な航空兵力や地上戦力によって東西から攻勢を続けられると敗退を重ねた。
1944年7月20日、ヴァンゼー湖で夏季休暇中のヒトラーをパウルス・フォン・シュタウフェンベルク大佐らが率いる陸軍部隊が逮捕した。陸軍の中では戦局の悪化は軍事作戦に無茶な要求や横槍を入れてくるヒトラーによるものだとする意見が多かった。ヒトラーはこうした動きを察知し、武装親衛隊によって陸軍をコントロールしようとしたが、こうした動きはかえって、ナチと政治的な距離を置いていた陸軍の反発を招いた。ヒトラーは逮捕され、陸軍はほとんど無血でクーデターに成功する。以降、ドイツは軍事政権による臨時政府の下、講和への道を探ることとなる。
ドイツは、イタリアやオスマンが降伏する中、V2ミサイルなど有力な新型兵器の開発を続けた。特に第二次世界大戦中、ドイツは核兵器開発を進めた。日本には広島、長崎にそれぞれが投下されたがドイツは核分裂反応を利用した核融合エネルギーによる爆発を得られる前期型水素爆弾の開発を目指していた。終戦時の段階では9割方完成していたとされており、これがドイツの戦後処理で有利に働いたと見ている研究者は少なくない。
ドイツはこの戦争において1150万人の軍人を動員し、民間人・軍人合わせて600万人近い人命が失われた。なお本校ではほとんど触れていないがこの中にはホロコーストによる犠牲者は含まれていないことに注意が必要である。
戦後処理と戦後政治
1945年12月21日、パリで第二次世界大戦の講和条約会議が開かれた。ドイツは講和文書に調印し、終戦に至った。第一次世界大戦での反省から、連合国側はドイツに対して賠償を要求しなかった。これには国土に大きな被害を負ったケーランティスやウィーンが反発したが、米国とブリタニアはあくまでドイツを戦後ヨーロッパ体制の中に組み込むことによって再出発させようとした。こうした連合国の融和的な態度は、ドイツが署名した文書が降伏文書ではなく講和条約文書だったことからも明らかである。一方で、研究者の中には前述したようにドイツの核戦力と開発能力を警戒したためだと主張するものも少なくない。
連合国側はドイツに賠償金を課さない代わりに、二つの条件をつけた。徹底した非ナチ化と、連合国が主導する新しい戦後外交体制に参加することである。
非ナチ化は速やかに進められた。元々7月20日事件でヒトラーが逮捕され、政府は軍部による臨時政権に変わっていた。NSDAP、つまりナチの省庁や機関は未だ残っていたものの、軍部の影響力が絶対的であったためほとんど意味をなさず、単なる政府機関としての役割に留まっていた。それで国内からヒトラーとナチの体制を一掃するまで、さほど時間はかからなかった。一方で非ナチ化が容易いものではなかったことも事実である。NSDAP、つまりナチの政権は多数の有権者に支持された結果民主的に選ばれた権力であり、国民の中には再びドイツを偉大な国としてヨーロッパにその存在感を広げたいと考える者が多かったからである。ナチは分類的には極右勢力であり、保守派だったので旧皇族・王族支持者との相性が良かった。そこで臨時政府は海外に居住していたホーエンツォレルン家当主、アンツバッハをドイツに呼び戻し、ベルリン公として特別な地位に回帰させた。ホーエンツォレルン家はドイツに現在でも残る貴族諸家のなかでも特別な存在として、名目上のベルリンの統治権を許されることとなった。ベルリンはもはや首都ではなくなり、特別市として州や国家と対等な権限を有する自治体となった。
1946年6月1日、ドイツ連邦基本法が公布。同日に戦時中から続くドイツ暫定政権は解散し、ドイツ連邦政府に役割が引き継がれた。伝統的なドイツ的価値観を大事にしながら、諸外国との足並みを揃えてよりよい国を目指すという願いから、120年ぶりに「ドイツ連邦」の名前が復活した。国旗にも表されているように*6国内にドイツ人と共に住むマジャール人に対する配慮に心を砕き、新政権は首都をダンツィヒに変更した。ダンツィヒは戦時中の主要な空爆目標からは外されており、比較的被害も少なかった。以降ダンツィヒは国家の政治の中心として発展する。
戦後は旧連合国側との関係を重視し、西側諸国との外交関係を強化した。国土の割譲や賠償金も課されず、さらには米国からのドル借款援助、有償軍事援助などを受けることにも成功した。1948年には国際連合にも加盟し、国連の非常任理事国には全9回選出されている。比較的早くに核保有国となったドイツではあるが、戦後に核戦力の放棄を宣言。その後国際安全保障情勢の変化に伴い、1990年のブリタニアとの安保条約によって核戦力を共同運用・管理することにより、事実上の核抑止力を手に入れた。
連合国側はドイツに賠償金を課さない代わりに、二つの条件をつけた。徹底した非ナチ化と、連合国が主導する新しい戦後外交体制に参加することである。
非ナチ化は速やかに進められた。元々7月20日事件でヒトラーが逮捕され、政府は軍部による臨時政権に変わっていた。NSDAP、つまりナチの省庁や機関は未だ残っていたものの、軍部の影響力が絶対的であったためほとんど意味をなさず、単なる政府機関としての役割に留まっていた。それで国内からヒトラーとナチの体制を一掃するまで、さほど時間はかからなかった。一方で非ナチ化が容易いものではなかったことも事実である。NSDAP、つまりナチの政権は多数の有権者に支持された結果民主的に選ばれた権力であり、国民の中には再びドイツを偉大な国としてヨーロッパにその存在感を広げたいと考える者が多かったからである。ナチは分類的には極右勢力であり、保守派だったので旧皇族・王族支持者との相性が良かった。そこで臨時政府は海外に居住していたホーエンツォレルン家当主、アンツバッハをドイツに呼び戻し、ベルリン公として特別な地位に回帰させた。ホーエンツォレルン家はドイツに現在でも残る貴族諸家のなかでも特別な存在として、名目上のベルリンの統治権を許されることとなった。ベルリンはもはや首都ではなくなり、特別市として州や国家と対等な権限を有する自治体となった。
1946年6月1日、ドイツ連邦基本法が公布。同日に戦時中から続くドイツ暫定政権は解散し、ドイツ連邦政府に役割が引き継がれた。伝統的なドイツ的価値観を大事にしながら、諸外国との足並みを揃えてよりよい国を目指すという願いから、120年ぶりに「ドイツ連邦」の名前が復活した。国旗にも表されているように*6国内にドイツ人と共に住むマジャール人に対する配慮に心を砕き、新政権は首都をダンツィヒに変更した。ダンツィヒは戦時中の主要な空爆目標からは外されており、比較的被害も少なかった。以降ダンツィヒは国家の政治の中心として発展する。
戦後は旧連合国側との関係を重視し、西側諸国との外交関係を強化した。国土の割譲や賠償金も課されず、さらには米国からのドル借款援助、有償軍事援助などを受けることにも成功した。1948年には国際連合にも加盟し、国連の非常任理事国には全9回選出されている。比較的早くに核保有国となったドイツではあるが、戦後に核戦力の放棄を宣言。その後国際安全保障情勢の変化に伴い、1990年のブリタニアとの安保条約によって核戦力を共同運用・管理することにより、事実上の核抑止力を手に入れた。
現代のドイツ
21世紀に入ると従来の欧州・西側諸国重視の外交からアジアやアフリカに手を伸ばし、様々な協力関係を築いている。アクスムとはエネルギー協定を締結し、エネルギー資源の供給安定化を果たした。高砂国とはアジア諸国で初めて、安全保障条約を締結し軍事面だけでなく、農業、教育、経済分野でも協力を進めている。
ドイツは現在、世界第4位の国連分担金拠出国である。また、アフリカへの投資額は累計で8000億マルクを越えており、米国に次いで世界第2位である。工業製品分野に限っていえば、輸出額及び輸出黒字額を毎年大東亜と競っており、世界首位クラスにある。またドイツは、米国に次いで世界第2位の移民受け入れ国でもある。2021年、ドイツは全世界から新たに61万5091人の移民を受け入れた。こうした背景から近年、ドイツ語の需要は微増傾向にある。
ドイツは現在、世界第4位の国連分担金拠出国である。また、アフリカへの投資額は累計で8000億マルクを越えており、米国に次いで世界第2位である。工業製品分野に限っていえば、輸出額及び輸出黒字額を毎年大東亜と競っており、世界首位クラスにある。またドイツは、米国に次いで世界第2位の移民受け入れ国でもある。2021年、ドイツは全世界から新たに61万5091人の移民を受け入れた。こうした背景から近年、ドイツ語の需要は微増傾向にある。
政治
ドイツは議会制民主主義制度を採用しており、連邦議会は上院(定数:250)と下院(定数:500)の二院制となっている。上院に優越の原則があり、下院で採択された議決や法案も上院で否決されれば無効となる。上院はドイツ帝国時代、および旧ドイツ連邦時代の貴族院の流れを汲んでおり、かつては貴族の出身の議員が多かったが今では多種多様な背景を持つ議員も増えてきている。
ドイツは全26の連邦州からなる連邦州国家であり、各州にもそれぞれ独自の議会や政府を有する。このためドイツでは連邦議会の選挙と、州政府議会の選挙が別個に存在する。
国家元首は連邦大統領であるが、儀式・形式的な面が強く、実質的に政府を代表しているのは連邦首相である。各州のトップは長官と呼び、中央政府たる連邦政府の中では国務大臣と席次は同格であるとされる。連邦法よりも上位の法で、ドイツ国内の最高法規とされているのがドイツ連邦基本法(Deutschen Bundesgrundgesetz)である。基本法という名称ではあるが、諸外国の憲法に相当する。
ドイツは全26の連邦州からなる連邦州国家であり、各州にもそれぞれ独自の議会や政府を有する。このためドイツでは連邦議会の選挙と、州政府議会の選挙が別個に存在する。
国家元首は連邦大統領であるが、儀式・形式的な面が強く、実質的に政府を代表しているのは連邦首相である。各州のトップは長官と呼び、中央政府たる連邦政府の中では国務大臣と席次は同格であるとされる。連邦法よりも上位の法で、ドイツ国内の最高法規とされているのがドイツ連邦基本法(Deutschen Bundesgrundgesetz)である。基本法という名称ではあるが、諸外国の憲法に相当する。
大統領
連邦大統領は基本法によるとドイツ連邦の国家元首であり、同時にドイツ連邦の象徴であるとされている。任期は6年で、再選は2回までに限って可能。ドイツでは、首相は現職の国会議員から選ばれることとなっているのに対して、大統領は国会議員に限定されず、広く国民から選出することができるとされている。このため、法解釈上は民間から大統領を迎えることも不可能ではないが、現行の基本法下では前列がない。慣習的に国会議員か引退議員から選出されている。
大統領は名誉職的な立ち位置にあり、その職務や権限は儀礼的、または形式的なものがほとんどであるが、いくつかは大統領のみに許された重要な権限として法で規定されている。両議員の前で教書演説を行う、外国使節に信任、またはペルソナ・ノン・グラータに基づく退去令を出す、恩赦、減刑、賞典の交付及び付与を行う、議会の承認を得たのちに外国に対して宣戦を布告する、などである。
現職は2017年より務めるエーリッヒ・ルーデンドルフ。
大統領は名誉職的な立ち位置にあり、その職務や権限は儀礼的、または形式的なものがほとんどであるが、いくつかは大統領のみに許された重要な権限として法で規定されている。両議員の前で教書演説を行う、外国使節に信任、またはペルソナ・ノン・グラータに基づく退去令を出す、恩赦、減刑、賞典の交付及び付与を行う、議会の承認を得たのちに外国に対して宣戦を布告する、などである。
現職は2017年より務めるエーリッヒ・ルーデンドルフ。
首相
事実上のドイツ連邦国家元首として、行政権のトップの座にあるのがドイツ連邦首相である。諸外国の首相、大統領、国王、行政長官の地位に相当し、その業務は多岐にわたる。ドイツ連邦基本法によって規定されている、ドイツ連邦首相の主な権限・職務は以下の通り。
現職はリッツ・エアグリューヴで、ドイツ連邦史上初の女性首相、また就任時最年少の首相でもある。
- 議会の解散権
- 外国との外交文書の批准、署名、調印を行う
- 大統領及びベルリン公に対する政治時事報告
- 大統領が行う恩赦や賞典などの提案
- 平時のドイツ連邦軍の最高司令官権限
現職はリッツ・エアグリューヴで、ドイツ連邦史上初の女性首相、また就任時最年少の首相でもある。
中央省庁
行政権を行使する政府の下に、以下の省庁が設置されている。ドイツでは政府が長年、大きな政府路線を続けてきたこともあり、省庁や政府機関が比較的多く複雑化していると批判を呼ぶことも少なくない。中央省庁の長は長官と呼ばれ、以前は民間人も務めることができたが、2006年の法改正によって議員経験者に限られることとなった。
諸外国で副首相・副大統領に相当する地位は必ずしも選出が必要ではないこととなっている。これは、副首相のような地位はリスクに備えた政府存続機能であるが、ドイツでは大統領と首相という二大役職が用意されており、大統領には有事の際の非常大権によってこの役目が捕捉されていると考えられているからである。
- 内務省
- 外務省
- 財務省
- 司法省
- 国防省
- 雇用労働省
- 保健衛生省
- 経済産業省
- 少子化対策省
- 教育科学技術省
- 国土開発運輸省
- 食糧省
- エネルギー省
- 災害対策省
- 環境省
- 国家戦略PR・観光省
- 宗教省
諸外国で副首相・副大統領に相当する地位は必ずしも選出が必要ではないこととなっている。これは、副首相のような地位はリスクに備えた政府存続機能であるが、ドイツでは大統領と首相という二大役職が用意されており、大統領には有事の際の非常大権によってこの役目が捕捉されていると考えられているからである。
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